「ほうろく菜種油」ができるまで

「ほうろく菜種油」は、愛知県西尾市にある小さな工場で、
ていねいにつくっています。
嘘も偽りもない真摯な工程をさっそくご案内しましょう。

伝承油のつくりかた


太陽の恵みで黄金色に輝く油に
ほうろく屋で使う菜種はすべて、遺伝子組み換えのない国産にこだわっています。契約農家で天日干しされた菜種を、もう一度地面に広げてしっかりと太陽の光に当てます。不思議なもので、干せば干すほど仕上がりの黄金色がクリアに輝き、搾油も安定します。干物もシイタケと同じく、天日で干すほどに旨みが増す―太陽の恵みはやはり素晴らしいものですね!

風の力で良質な種を選り分ける
「ほうろく菜種油」で使うのは、黒く締まった丸い菜種のみ。風を当て種の重さで選別する「唐箕(とうみ)」という昔ながらの装置を使い、重量の軽い種とゴミを取り除きます。さらに職人の目視によって質のいい種を吟味し、次の焙煎工程へ。またここで取り除かれた菜種は捨てずに製油して、薪を伐採するためのチェーンソーオイルに活用中。森林を汚さないエコな知恵です。
ほうろく釜と薪を使い、五感で見極める油のよしあしが決まる「焙煎」は、職人が最も集中する工程です。ほうろく屋では先代から譲り受けた鉄製の「ほうろく鍋」に吟味した菜種を加え、おくどに薪で火をくべて、じっくりと熱を加えていきます。ベストな焙煎具合を見極める手段は、職人の目、熱々の種を触りつぶす感覚、パチパチッと弾ける音、舌触りといった、マニュアルには書けない勘と経験のみ。その日の天候や種の状態に合わせた職人技ぶより、美味しい油になるのです。またつきっきりで火の番をする焙煎は、夏の熱中症とも戦う過酷な工程と言えます。


60年の歴史がしみこんだ圧搾機で搾る
焙煎した熱々の菜種を、60年以上使用している希少な圧搾機「ダブルエキスぺラー」へ放り込み、力を加えます。すると菜種は機械の中を通りながらつぶされ、じんわりと菜種油がしみだしてきます。このジワー、ポタポタというゆっくりとしたペースで搾り出す方法が、今健康志向の方に注目されている「圧搾一番搾り」です。また良質な菜種油を搾った後の“生きた”油かすも、人気の商品。西尾市の名産であるお茶の農家や、全国の盆栽名人からぼかし肥料として引く手あまたです。

2週間置いて上澄みを取り分け、ろ過する
じわーとしみだしてきた油を一斗缶に集めて、2週間以上静かに置いておきます。すると自然の力だけで、沈殿物・含有物がふわふわと舞う層、上澄みという3層に分けることができます。続いて沈殿物以外の油をろ紙でこしていきます。ここでも無理な力はかけず、重力のみでポタポタと。実は、焙煎温度の見極めにより、このような自然ろ過も可能になるのです。上澄みだけをろ過して瓶詰したものが、生タイプの『荒搾り油』になります。

先代直伝の技で、酸化に強い油をつくる
「伝承油」は、先代直伝の方法を守った昔ながらの菜種油。最終工程として、ろ過した油を薪の火で一度火を通す火入れを行います。すると余分な水分が飛んで油が安定し、コシが強くなるのです。火入れのひと手間で、揚げ物を繰り返しても酸化しにくい「捨てない、使い切る油」へ! 香ばしい香りや独特の風味がつき、揚げ物や炒め物の味わいがワンランクアップします。

 


いかがでしたか? 伝統的な油の搾油法について、知っていただけたでしょうか?
薬品抽出や、シリコンなどの添加物が含まれた油が一般的になってきた今、改めて手仕事でつくる希少な油が見直されてきています。

INFORMATION
「実際に菜種油の工房を見学してみたい」という方は、見学イベントを定期的に開催しています。
詳しくは「ほうろく屋」のFacebookをご覧ください!

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